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はじめてをきみに
第1章 きみの名前を呼ぶ

東京から地下鉄で20分のところに、先輩のアパートはあるらしい。
170円の切符を買って、電車に乗り込む。
「とりあえず、合格おめでとう」
座席に座って一息つくと、先輩がそう言った。
家族とか友達とかに、「お前みたいなバカが!」って驚かれながらも散々祝われたけど、先輩の静かな「おめでとう」がいちばんうれしかった。
俺は、思わずにこにことほころぶ顔をそのままにして「ありがとうございます」と返した。
「ま、当然の結果といえば当然の結果ですけどね。これで先輩と同じ大学に受かんないと、なんのために1年も会うの我慢して勉強したのか分かんないっすもん」
「電話は毎日のようにかけてきてたけどね」
「すいません、さみしくて。うざかったですか?」
「……ううん。う……、」
「う?」
「……なんでもない」

