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はじめてをきみに
第2章 据え膳が前のめり

――そもそも、こんな奇妙な事態になった原因はというと、およそ3時間前にさかのぼる。
「はあ!?」
友達のみのりと待ち合わせ中の大学食堂の片隅で、あたしは不機嫌な声を上げていた。
手の中には、先月買い替えたばかりのスマホ。その画面には、あたしの幼なじみ兼彼氏、遼平からのLINE。内容はこうだ。
『ごめん、バイトで急に休んだやつがいるらしくて代役頼まれた。上がれるの22時くらいになりそう』
今日がなんの変哲もない1日だったなら、「分かった。頑張ってー」と返しただろう。
「また代わってあげてる、優しいなあ。遼平らしい」とさえ思ったかもしれない。
けれど、今日だけはそうはいかなかった。
なぜなら、今日はあたしの誕生日だから。
人生で初めて、遼平とふたりきりで祝ってもらえるはずの。ずーっと前から楽しみにしていた、大切な大切な1日。

