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はじめてをきみに
第2章 据え膳が前のめり

あたしはしばらく考えて、『分かった。頑張ってね』と返事を打ちこませようとする自分の良心を握りつぶした。


……いや、そんなことはないぞ。


と、もう一人のあたしがささやいたのだ。


良心という砦をなくした心の中に、今までため込んでいた遼平への不満がどろどろと溢れ出す。


優柔不断で、八方美人。

潔癖症の節があって、細かいことにやいやいうるさい。

そして、恋人としていちばん不満なのは。


付き合って1年、同棲して3か月にもなるのに、キス以上のことをしてこない。


こっちがそれとなく誘っても、だ。いつもそれとなくはぐらかされる。


そんなことあり得る? あり得ていいの?


恋人どうしが、同じ屋根の下で、一緒に暮らしてるのにも関わらずだよ。


どうして今まで、「遼平だから」の一言で、我慢することができたんだろう。


よく考えたらどれもこれも、あたしの価値観ではあり得ないじゃない。



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