この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
はじめてをきみに
第2章 据え膳が前のめり

「うわあああああ!」
先に動いたのは遼平だった。
状況を把握するやいなや、焦ったような声を上げてあたしに背を向け、扉に腕をつき顔を伏せる。
「ごめんごめんごめん! いやまさかこのようなことが起こっているなどとは露知らず! 申し訳ない!」
「遼平、」
「いやマジで悪気はなかったんだ、バイトの代役頼まれて、断りきれなくて行こうかと思ったけど、やっぱり亜衣の誕生日祝いたいし、さっきの電話も気になるしで、他の代役見つけてやっとこさ帰ってきたという次第で、」
「遼平……」
「ほんとごめん! もとはといえばここ亜衣のうちなんだし、ノックぐらいするべきだったよな! うん! 無神経でごめん! 何も見てないからおれ! とりあえずコンビニとか行ってくるからぜんぜん続けて!」
「…………」
一瞬許そうかと思ったけど、その思いはほんとうに一瞬で消えた。
消えたどころか、「何も見てないからおれ!」のくだりであたしの中の何かがプチンと切れた。
あたしは音もなくゆらゆらと立ち上がり、後ろを向いてヒイヒイ言っている遼平に近づく。

