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はじめてをきみに
第2章 据え膳が前のめり

遼平はまばたきをせずに、面食らったような顔で、泣きじゃくるあたしをじっと見ていた。
そしてやがて、
「ごめん!」
と言って、あたしをぎゅっと、強い力で抱き寄せた。
ハグも、キスも、いつだっておずおずと頼りない遼平の力強い抱擁に、今度はあたしが面食らう。
「りょうへい、」
「ごめん、おれ、亜衣がそんなこと思ってたなんて気づかなくて……。不安にさせて、ごめん」
「……うん」
「……あのさ、あの……、大変お恥ずかしいんだけれども……」
「ん?」
遼平はそこで言葉を切って、
「おれ、その、したことなくて」
と、とても小さな声で言った。
「だからその、どうしたらいいのか分からなくて。亜衣がしたいんだろうなっていうのはなんとなく分かったし、おれもしたい気持ちはあって、頭ん中でシミュレーションとかするんだけど、いざとなると恥ずかしさとか戸惑いとかのほうが勝っちゃって……。ほんとごめん」
抱き寄せられているから顔は見えないけれど、やるせない表情をしているんだろうなというのは、声音を聞けば分かる。

