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はじめてをきみに
第3章 愛はやさしくない

「んんっ、はっ、ちょ、待って待ってヒロくん……! 話聞いて、」

「何された?」

「へ?」

「キスの他に何された?」

「キス以上のことはされてないよ! 告白されて、急に……」

「キス以上とか以下とか……」

 そういう問題じゃないんだよ。俺以外の男が茉由に好意を寄せて、そういう目で見たり触ったりするの、ぜんぶ許せないんだよ。

 そう思ったけど口には出せない。人生で初めて経験するような、その激しいイライラやもやもやのやり場が分からず、俺はかけていたメガネを床に捨て置いた。そして衝動のままに、激しい感情のすべてを乱暴なキスでぶつける。





 『送別会で飲みすぎたふらふらする……ごめんだけど駅までむかえに来』と、打ちかけのメールが茉由から届いたのが40分前だった。

 「バイト先の先輩が就職決まって、バイト辞めちゃうから送別会するの!」という話は事前に聞いていて、そういう席で茉由がたいてい酒に呑まれることも知っていた。そしてそういうとき、茉由が決まって俺を頼りにすることも。迎えに行ったら、とろんとした赤ら顔で、「いつもごめんねえ」ともたれかかってくる世話の焼ける彼女が、俺は愛おしくてたまらなかったりする。

 『分かったすぐ行く』と返信して家を出たのが30分前。駅に着いたのが20分前。そして人気のない駅で茉由が見知らぬ男にキスされているのを見たのが18分前で、キスされて動揺しまくっていた茉由の手を引いて有無を言わさず俺のアパートに連れ込み、衝動に任せて彼女を襲っているのが現在だ。



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