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はじめてをきみに
第3章 愛はやさしくない

「ご、ごめんねヒロくん」
「何が」
「だからその、高橋くんを振り払えなくて……。迎えはヒロくんに頼んだからいい、って言ったんだけど、俺が送ってくって言って聞いてくれなくて……。まさか高橋くんがあたしのこと好きだとは思ってなかったから、強く言えなかった」
茉由がしゅんとする。俺はキスを中断して彼女をじっと見た。茉由はちゃんと分かっている。俺がなんで怒っているか。そして自分の不用意さ、無防備さを悔いている。
「分かってるよ」って笑ってやらなきゃ。「もういいよ」って頭を撫でてあげなきゃ。今までそうしてきたように。茉由がデートに寝坊したとき、料理を失敗したとき、俺の誕生日を間違えて覚えていたとき、いつもそうしてきたように。
それなのに今日はうまくできない。イライラが消えない。俺以外の奴が茉由に触れたんだ、とか、あいつ高橋っていうのか、とか。思い出すたびに怒りが煮えたぎって、自分をうまく制御できない。
「ひゃっ、ヒロく……、あっ!」
乱暴なやり方にうろたえる茉由を無視して、彼女のTシャツをブラと一緒にたくしあげた。あらわになった胸を揉み上げ、はじめから強く、乳首を吸う。
茉由と付き合い始めてもう1年以上経つけど、セックスはいつも、できるだけ優しく、丁寧にしていた。見つめ合って、キスをして、抱きしめて。茉由の感じるところだけを、茉由のしてほしいところだけをゆっくり攻めて。理由は、茉由を大事にしたいから。それ以外にない。
今だって、茉由を大事にしたい気持ちに変わりはない。でもとまらない。優しくできない。未知の、恐ろしいくらい激しい何かが、俺の内側を焦がしてせきたてる。
もっともっと、めちゃくちゃにしてしまえ。

