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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
――そうだ、もし、また彼にあの瞳で見詰められたら、拒めるの?
切れ長で、キツい印象の瞳が時に優しく甘い色を帯びる瞬間がある――彼が、私に笑いかける時にはいつもそうだった。
困惑したような、哀しいような、嬉しいような――幾つもの感情が混ざりあった瞳の色。
またあの瞳を間近で見てしまったら、正気でいられるの――?
しゃくりあげていると、ハンカチが差し出された。
花野が静かな目で私を見詰めている。
まるで何もかもを分かっていて、それで黙って見守っているようにも見えた。
ハンカチで目尻を押さえ、震えてしまい泣き止む事が出来ない私の肩を軽く叩き、一言だけ言った。
「少しの間、皆がそれぞれ距離を置いたほうがいいわ」