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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
あの広い部屋には、彼以外の人が住んでいないのだろうか?
踏み込んだ事を聞けないオーラを彼が発していたから何も私は言えなかったけれど……
『菊野さん……ダメ?』
今まで聞いたことのない弱々しい声が耳元で聞こえて、私はついには明日の事を約束してしまっていた。
「はあ……」
電話を切るとどっと疲れてしまい、頭を抱える。
彼の中に幼い男の子を見たような気がして、つい返事をしてしまった。
『菊野、あんたはキャッチセールスとか、怪しい訪問販売だとか絶対に断れなくてついつい判子を押しちゃう人よね?
万が一、いや、あんたの事だから百が一くらいかしら――
そういう事があったら本格的に困る前に私を呼びなさい!
NOと言えないあんたの代わりに私が!思いっきりNOと連呼してやるから!!いいわねっ』
以前、真歩に言われた言葉を思い出してひとり苦笑する。
まさか、今回の事で彼女に相談するわけにはいかない……