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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
「――嬉しそうね、彰」
森本が、耳に残る菊野の声に酔いながらスマホの画面を眺めていると、横を歩く清崎の鋭い視線が突き刺さる。
彼は無意識に緩んでいた頬を引き締めカバーを閉じると上着のポケットにスマホをしまう。
すっかり暗くなってしまった住宅街の明かりはまばらだった。
泊まっていくと言い張る彼女を何とか宥めて家まで送っていく途中、菊野からのメールが来たのを見た清崎に
会う約束を取り付けろ、と物凄い迫力で命令され、半ば仕方なく電話したのだ。
この間の事があったから、菊野は大丈夫だろうかと思っていたが元気そうでホッとした。
そこで彼は自分の思いを再確認する。
菊野が怖がったり、苦しんだり、泣いたりするのを自分は見たくないらしい。