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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
母親への思慕のようなものだろうか?
とも考えたりもしたが、そもそも自分は母を知らないのだから、それがどういう感情なのかも分からない。
ただ、菊野が悲しみや苦しみに顔を歪めるのを見ると、自分も辛くなる、という事だけはわかる。
彼女は、他の親達に比べて若いとは言っても、れっきとした大人なのに、あまりにも頼り無さすぎて純粋すぎる。
それなのに、剛と関係を持つなんて――いずれ泣くことになるのに。
不意に、フローラルの香りと共に唇に柔らかい物が押し当てられる。
清崎が、自分の家の門の前で彼の唇を奪ったのだった。
森本は、彼女の唇に指で触れ、軽く叱る。
「晴香、こんな所でだめだろう。家の人とか近所の人とか……」
「私の親は、私の成績とかテストの点数しか興味ないの。
私が何をしようが関係ないのよ」
「いや、そんな事ないだろ」
「いいのよ……そんなのどうでも……」
「晴香――」