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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
彼女は息をはあ、と切らして再びベッドへ身体を沈め、菊野の優しく柔らかい笑顔を思い浮かべた。
――聖母のような顔をしていても、中身は自分と同じ女だ。
『大人しいと思ってたのに、スゴい子だね、晴香は』
と森本に言われた事があるが、あの言葉には深く傷付いた。
「女たらしのくせに……無神経な事を時々言うわよね……」
爪を噛み、俯せになってスマホに触り、画像ファイルを眺める。
隠し撮りした剛の色んな写真を指で触れては溜め息を吐く。
一目見た時から彼を好きだった。
触れると切れてしまいそうに鋭いその瞳も、優雅で長い手足も、綺麗な指先も――
そして、時折見せる暗い表情に、不思議な程惹かれていった。