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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
清崎は可愛らしい容姿と大人しい性格で男子から人気があり、中学に入った時から異性から手紙をもらったり、移動教室の時に友達と廊下を歩いていたり、体育の授業を受けている時には何人かの男子に口笛を吹かれたり、冷やかす口調で
「晴香ちゃ――ん、おっぱい揉ませて」
「清崎――!処女、俺にくれよ」
などとからかわれた。
その度に胸の中では殺意に似た侮蔑の感情が芽生えたが、ムキになって大きな声を出したりするのは逆効果だ。
彼女は困惑と恥じらいの表情を浮かべて頬を真っ赤に染めて、俯いて遣り過ごした。
勿論、演技だ。
男子はそんな彼女の反応を見て、「か――わいい!」
と騒ぎ、益々彼女に熱をあげた。
彼女はそんな同級生達を忌々しく思いながら、可愛い女の子を演じた。
口答えして、生意気な女だと思われたら癪だ。
それに、もし何処かで剛に見られていたら――
彼には、『可愛い』と思われたい。
だから、いつ何時でも自分が彼に見られているかも知れない、と思って振る舞っていた。
中学三年生で彼と同じクラスになった時、心に決めたのだ。
彼を必ず自分に夢中にさせて見せる、と。