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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕
「晴香、こっちへおいで……この子に撮ってもらうから」
父に大きな声で呼ばれ、彼女が我にかえり顔を上げると驚きに目を見張った。
剛がカメラを持って、目の前に立っている。
真新しい学生服の肩にはらり、と桜の花びらが落ち、真っ直ぐな髪にも飾りのように張り付いている。
彼女は思わず手を伸ばして彼の髪の花びらを指で摘まんだ。
剛は驚きに少しだけ瞳を揺らすが、彼女の手の中の花弁を見て、小さく笑った。
「――ありがとう」
低い、けれど澄んだ響く声に、彼の笑みに彼女は完全に心を奪われた。
舞い上がりそうになるのを必死に抑え、自分が出来る精一杯の可愛らしい微笑みを向ける。
「どういたしまして……」
「じゃあ、撮るよ?皆並んで」
「はい……お願いします」
桜の前で待ち構える両親の真ん中に立ち、彼女はカメラを構える剛を熱く見詰めた。