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愛しては、ならない
第40章 更に抉られる、傷痕



「はい……多分撮れたと思います」

「ありがとうごさいます……
あ……あの……良かったら、私が撮りましょうか」

「え……お願いしても、いいかな」



彼は、少し離れたところに居る菊野に軽く手を振った。

菊野は嬉しそうに小走りでやって来て、危うくつまづきそうになりよろけたが、なんとか転ばずにいれたようだった。

舌を出す彼女に、剛は苦笑しながらも優しい目を向けている。




「じゃあ、いいですか?撮ります……」




その時、強い風が吹き抜け、菊野の長い髪が乱れた。

剛が素早く彼女の髪を指で取り肩に流したが、その一瞬、彼の瞳が烈しい光を帯びたのを、清崎はレンズを通して見たのだ。

――彼がそんな風に瞳を輝かすのを、間近で見てみたい、とその時に強く思った。




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