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愛しては、ならない
第41章 更に抉られる、傷痕②
「剛さん!?どうしたの」
「剛!!大丈夫かっ」
俺は、どうやら大声で叫んでいたらしい。
花野達がリビングから飛んできて俺の手を握ろうとしたが、二人の姿が俺の両親とだぶり、思わず振り払ってしまい、バランスを崩した祖父がよろけて花野が支える。
ああ、しまった――そう思っても、幼い頃に聞いた二人の喘ぐ声や叫びが頭の中で反響し、俺は正気を失いつつあった。
「来るな……っボクにさわるな――っ!!」
俺の意識は完全に幼児に戻っていた。
タバコの火をふざけて押し付けようとする父の醜く歪んだ笑顔。
泣き叫ぶ息子を見てケラケラと声をあげて笑う母。
二人の影が押し入れに逃げ込むボクに近付いてくる。
『あんたなんか、どうだっていいのよ――
はっきり言って、死んでくれても構わないわ。
でも、色々と面倒くさいじゃない?
……ああ、産むんじゃなかった……
あんたなんかいらない……要らないのよ!!』
――ワタシニフレナイデ――
何処かで聞いた声が母の声に重なる。
そうだ、菊野が、ボクに言ったんだ。