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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……
「うっ……」
森本のマンションのエレベーターの中で、思い出し泣きをしそうになってハンカチで鼻を押さえた。
すると扉が開いて、彼の部屋への到着をチャイムが知らせる。
――ああ、着いてしまった。
大きく溜め息を吐いてドアの前に立つと同時にドアが開いて、仰天して声をあげそうになるが、彼の手で口を塞がれる。
彼は、ニット帽を目深に被り、赤と黒のギンガムチェックのシャツを羽織りGパンというラフなスタイルで、制服の時よりも子供に見えた。
いや、まだ15歳の子供なのだが、超然として大人びた彼の印象しかない私は、少し意外に思った。
「菊野さん、夕方まで時間大丈夫?」
彼は、私の手を握ったまま自分も外に出てきて鍵を掛けて、いきなりそう言ってきた。
「う……うん、大丈夫です」
「予定変更してさ、出掛けようよ」
「えええっ?」
「今日、すごくいい天気だしさ」
「あ、あの……森本くん、体調は」
彼は私の手を引っ張ってエレベーターに乗り込むと、悪戯に目を輝かせて舌を出す。
「さっき、治りました」
「なっ……」