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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……
「菊野さん」
森本が、当然のように私の肩を抱きよせる。
ドキリとして、彼から離れようと身を捩るが脇を擽られ力が抜けてしまう。
「も……っりもとく……何を」
「凄く疲れてない?菊野さん……
顔色が良くない」
彼は顔を覗き込んできてサラリと言うが、私は思わず手で顔を隠した。
一目で見て言われてしまう程に酷い状態なのだろうか。
彼は、そんな私の気持ちを汲み取ったかのように優しい笑みを浮かべて首を振った。
「いや、それでもとっても綺麗ですよ……」
「……っ」
思わずどぎまぎしていると大きな掌が頭を掴み、彼の肩に強制的にもたせかけられた。
「着くまでの間、眠ってなよ。僕が枕になってあげるから」
「ね……眠くない」
「いや、ひと休みして下さい。沢山泣いたから疲れたでしょう」
「……それは……森本くんが……」
反論しようとしたが、窓から差し込む柔らかい陽射しと彼の優しい香りで微睡んでしまい瞼が重くなる。
髪を柔らかい手付きで撫でられたような気がするが、既に私は心地よい眠りの中へと沈んでいた。