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愛しては、ならない
第42章 最初で最後の……
彼の肩越しには青空が見え、少し離れた所からジェットコースターの音と狂乱の悲鳴が聞こえてくる。
スカートから出ている脹ら脛に芝が触れてチクチクするが、彼に頬をそっと撫でられ、甘い震えに身体の感覚が支配される。
くるりとした彼の栗色の前髪が私の額に触れる程に彼は私に近付いて小さく囁いた。
「……お願いします……今だけ……何もかも忘れて……僕の恋人になって」
「……っ」
「菊野さん……菊野……」
「あっ……」
彼の唇が額に、頬に、顎に落とされ、くすぐったさと込み上げる寒気に身体が震える。
「貴女が好きだ……」
彼は、私の首筋にはらり、と舞い落ちた木の葉を指で掬い取ると、自分の唇を其処に押し当ててきた。