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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
『剛さんが好き……』
俺に抱かれた後に、頬を赤く染め、恥ずかしそうに小さく呟いた菊野。
その言葉をもう一度言わせたくてわざと聞き返すと、彼女は泣きそうに瞳を潤ませてそっぽを向くが、俺がその白い首筋に口付けると身体中を震わせて言った。
『ん……っ……好き……っ』
『聞こえない……もっと大きな声で言ってごらん』
『もうっ……剛さんの意地悪……っばかあっ』
『ふふ……キライですか?』
『……剛さんなんて……っ……す……好き……』
身体中を真っ赤に染める菊野を、俺は力一杯抱き締めて――
「――やめろ……っ」
頭と身体に残る彼女との記憶は一旦溢れだしたら止まらなくなった。
俺は歯を食い縛り、自分の頬を拳で殴り付けるが、鈍い痛みと共に、先程ロビーで会った彼女の表情が過った。