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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
「お爺ちゃんが入院してて……今日はお母さんが来れないから私が来たの」
「そう……」
「西本君は……えっと……誰かのお見舞い……だよね、当たり前だよね、病院だもの」
彼女はハスキーな声でそう言って歯を見せて笑う。
学校で聞いた時にも思ったが、その声や仕草がチャーミングだった。
彼女は風呂敷を拡げて中から苺の入ったパックを出して水洗いを始める。
「お爺ちゃん、これ好きなのよ……西本君、どうぞ」
彼女は一粒の苺に楊枝を刺して俺に渡して柔らかく笑った。
何も食べ物を受け付けていない俺は躊躇したが、彼女が気が悪くするといけない。
口に含むと心地好い甘酸っぱさが広がり、不思議と吐き気も込み上げてこなかった。