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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
「ちょ……皆……少し声を落として……」
菊野が困惑して収めようとするが、皆はなんだかある種の興奮状態にあるようで、菊野の言葉に頷いてはみるが、また話し声がどんどん大きくなっていく。
「それを言うなら、俺だってコンクールに向けての練習の成果をパパに見てもらわなくちゃ――!」
「あら祐樹、随分自信があるのねえ、じゃあ予選通過は余裕かしら?」
「花野ばーば、それきつい――!」
「楽しみだなあ発表会!皆で見に行くからな!」
「おじいちゃん――発表会違うからね」
「私も行くわよ――!バッチリ撮影してあげるから!」
「真歩せんせ、撮影禁止だってば」
「あら、そうなのっ?……厳しいわねえ……ちょっとくらい大目に見て許してくれればいいのにっ」
止まらない四人のお喋りに閉口した菊野と目が合うが、彼女は俺を見て明らかに困惑していた。
先程俺を惑わせたあの潤む瞳をまたこちらに向け、僅かに頬を染めて俯き、またチラリと俺を見上げて、また顔を逸らす。