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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
「パパ――!」
祐樹が真っ先に病室へ入っていき、花野と貴文が続き、真歩は菊野の手を引っ張った。
「菊野っ!愛する旦那様とのご対面よ!早く早く!」
「う……う……ん」
菊野は俺を振り返るが、強引に真歩に連れていかれてしまう。
思わず、大きく溜め息をひとり吐いた。
俺は一体、何を言おうとしたんだ。彼女にまた撥ね付けられるかも知れないのに?
愛しているから、だから何なんだ?
好きだから、何だと言うんだ。
俺は彼女をどうにも出来ない――
病室からは賑やかな皆の声が聞こえてくる。
悟志の声に、身体がビクリと震えて、掌に汗が滲む。
声は小さいように思うが、元気そうだった。低くて落ち着きのある、それでいて清涼感のある男らしい声は、彼の人となりを表している。
ああ……俺は敵わない。
彼から菊野を奪うなど……