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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
扉に手を掛けて一歩中へと足を踏み入れるが、祐樹が甘えるように悟志に寄りかかり、頭を撫でられていた。
その横で真歩が感極まって泣いていて、しきりに鼻をかんでいる。
貴文は腕を組み何か悟志と談笑しているが、多分俺とは関係の無い話なのだろう。
そんな事を気にする方が馬鹿げているが、今の俺はそう言う事に関して敏感になっていた。
菊野は今どんな表情で悟志を見ているのか、と気になったが、見たくなかった。
これ以上打ちのめされるのが恐ろしい。
夫婦の深い絆を目の当たりにしてしまったら、俺は――
だったら、やっぱり来なければよかったじゃないか――
こうなるのは分かっていた筈なのに、何故のこのこやって来たんだ?
そうだ。俺は、例えつれなくされて打ちのめされても、会いたかった。菊野に……
貴女の姿を一目でも見たかったんだ――