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愛しては、ならない
第44章 こわれる ②
菊野が離れて、悟志には忘れられ。
俺があの家にいて、あの人達と居る必要や理由があるのか。
――ふと、そんな想いが強烈に確信を持って胸の中に住み着く。
その想いは小さな棘を幾つも俺の中へと放り込み、耐え難い痛みを与えた。
胸をかきむしりながら、俺は無数の針が頭上から降り注ぎ、身体の中で小さな異形の怪物が暴れて心臓を食い荒らそうとしている幻覚に見舞われた。
「……く……あ……っ」
ふらり、とよろめいた時に誰かにぶつかったようだった。
看護師だろうか。
「あの……大丈夫ですか?
何処か具合が良くないのでは?」
俺は返事をする余裕もなく、ただ首を振る。
「……西本さんのご家族の方ですよね?
ご家族のかたをどなたか呼びましょうか」
看護師の言葉に、俺は全身を大きく震わせ、絶叫して駆け出した。
「――俺には家族は居ない!」