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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行
夕夏は直ぐ様後ろに乗ると、腕を腰にぎゅっと絡み付けてきた。
意識してしまうのを悟られない様に、俺はわざと素っ気ない声を出す。
「言っとくけど、俺の運転荒いから。ぼさっとしてると振り落とされるよ」
「うん。しっかり掴まってるね」
彼女はますます身体を密着させてきて、柔らかい胸の膨らみの感触と甘い髪の香りにクラリ、と目眩をおぼえる。
――俺は何処まで節操が無いんだ、と内心思ったが、後ろで鼻歌を口ずさみ始める彼女の気楽な様子に何だかホッとする。
「さて、何処へ行く?」
「何処って……」
俺は唖然とするが、彼女はあっけらかんと答える。
「遊びに行ってもいいけど補導されちゃうねえ。
う――ん、やっぱり私んちにしようか。
今日、誰も居ないけど」
「え……」
サラリと爆弾を落とす彼女に驚き思わず振り返った時、自転車置き場の入口から聞き覚えのある声がした。
「……剛さんっ!
見つけたわよ――!」
「ありゃっ、見付かっちゃった」
突然現れた真歩に、夕夏は目を丸くする。
俺はペダルを漕ぎ出し、後ろの彼女に早口で言う。
「岬さん、本当にしっかり掴まって」
「え……」
俺は全力でペダルを漕いで、真歩に向かって突進する。
真歩は驚愕して口をポカンと開けて見ている。
「……真歩先生、そこを退いて!!」
「ひゃあああっ」
ぶつかる寸前、彼女は飛び退いた。