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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行


彼女に後ろから大声で道案内をされながら、時々聞き間違えておかしな場所へ迷い込んだりしたりして、病院から20分程走った小綺麗な家やアパートが密集した住宅地に着いた。

青い色の三角屋根のアパートの駐車場に自転車を停めて、彼女はポケットから鍵を取り出して一階のドアに差し込む。



「ここはね、殆ど近所付き合いもないから、私が男の子を連れ込んでも噂する人は居ないわよ。
だから安心してね」


何を安心して、なのか分からないが、俺は彼女の後について部屋へ入る。

玄関から台所を抜けると、フローリングの六畳ほどの部屋には電子ピアノが置いてあった。

女の子らしい物といえば、小さなドレッサーとカーテンレールに掛けてあるピンクのワンピース以外見当たらない。

カラーボックスの中には音楽雑誌が大量に入っていて、それもバンドスコアが載っている様な物だった。

壁には顔と名前だけ俺が知っている海外のロックバンドのポスターが貼ってある。

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