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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行
「ごめんね、西本君が来るって事前に分かってれば私もちゃんとまともなご飯を用意したんだけど」
カラフルなトレーにカップ麺を二つ載せてテーブルに注意深く置きながら彼女は少し頬を染めてペットボトルの茶を差し出してきた。
下着を畳め、と平気で言って来る癖に、こういう事で恥じらう夕夏がよく分からないが、俺は首を振った。
「いや、充分だよ。ありがとう」
「私ね、こう見えても料理は一通り出来るんだから。
……あ、その疑い深い目は何よ!本当だからねっ」
「いやいや、疑ってないよ」
「本当――?
……それとちなみにね、西本君が、私が初めて連れ込んだ男子!おめでと――!」
拍手しながら言われ、思わず茶を吹きそうになった。
以前、清崎が俺を家に誘った事があるが、あの時は菊野の事があってそれどころではなかったのだ。
清崎が俺に切り出した時の緊張し、恥ずかしさに頬を染めて唇を震わせた様子を思い出すと、夕夏のこの軽いノリが信じられなく思う。