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愛しては、ならない
第45章 小さな逃避行
「好きだから……っ……だから勇気を出したんだからっ……」
彼女はそう言うと、頭まで毛布を被ってしまった。
――好き、という言葉には危険な魔力がある。
少なくとも、菊野を失いかけている俺には特に。
あの家に居場所を見出だせなくなった今では尚更だった。
清崎の事が頭を掠めるが、今目の前で毛布を被り小さく嗚咽する夕夏の存在の方が圧倒的に重く迫ってきた。
彼女をこのまま泣かせたままにしてはいけない、と強烈に想うと同時に愛しさの様な熱が咽を締め付ける。
俺はベッドへ近付き、毛布に手を掛けると一気に彼女から剥がし、その身体を抱き締めた。
一瞬戸惑い震えた彼女だったが、直ぐに俺の首に腕を絡めて来る。
「……ど……同情とかなら、のし付けて返すからね」
「違うよ……」