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愛しては、ならない
第46章 小さな逃避行②
「そいつ……首を吊って、死んだわ」
彼女の頬も唇も真っ白になり、俺は温める様にその身体に毛布を被せ、その上から抱き締める。
彼女は途切れ途切れの声で更に語る。
「ママは、私が襲われそうになったって知ってからすぐに奴と別れたの。
ママにも捨てられて、バンドもクビになって……
それで……」
「夕夏――もういい」
「ママも、奴の自殺の後……バンドのファンから嫌がらせされたりして、不安定になって病院に通ってたわ」
「夕夏のせいじゃない、それは、そいつが悪いんだろ」
「……色々な事を考えた。私が奴の言うことを聞いてヤられてれば、こんな事にならなかったのかって」
「夕夏――!」
「でも……どのみち……私、奴を殺す事になってたのかも知れないし……
直接手を下した訳じゃなくても、私が殺したのと同じよ」
彼女はそこで大きく溜め息を吐いて、少しひきつる頬で笑った。
「でももう、大丈夫よ。高校入学に合わせて引っ越しして、環境を変えてからそう言うのも無くなったし、ママも明るくなったし、今のバンドマンの彼はちゃんとした人らしいし……」