この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第49章 それぞれの決別
勝負は、悟志の圧勝だった。
その勝負は、実に下らない物だった。
画用紙で作った、奴(やっこ)凧の様な人形をボーリングのピンに見立て、倒すという物だったが、ボールなどを投げて倒すのではないのだ。
紙人形から50センチ離れ――きっちり定規で計った――床に両手を突いてうずくまり、力一杯の鼻息で人形を倒すのだ。
ルールはボーリングと同じで、ストライクやスペアなどもある。
悟志は貴文に『貴文さんは初めてでしょうから、ハンデをあげます』とドヤ顔を向けたが、貴文はムキになってその申し出を却下した。
悟志は子供の頃からこの遊びをよくやっていたらしく、ストライクやスペアをバンバン出した。
だが、貴文は辛うじて一体の人形を倒すだけで精一杯だったのだ。
肺活量が活かされるゲームなだけに、貴文はもうヘトヘトになっていた。
『か……完敗だ……わかった。菊野は君にやる』
青息吐息で呟く貴文に、菊野は目を剥いた。
『ちょ……パパ!ちゅーからもっと話が大きくなってるわよっ』