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愛しては、ならない
第49章 それぞれの決別
彼の唇が触れた額と頬を指で撫でると、熱い涙がポロリ、と流れた。
菊野を追いかける彼の背中に恋していた自分は、何処かで――このままこの時間が続けばいいのに――
と思っていたのかも知れない。
菊野が居て、悟志と自分が居て。悟志が菊野へ片想いして、彼が一喜一憂したりするのを眺めて笑っていたかった。
悟志の纏う優しい柔らかな空気に包まれて、幸せで暖かな気持ちに浸っていたかった。
でも、時間は止まってはくれない。
真歩も菊野もずっと高校生では居られないのだ。
悟志だって、菊野との関係をこのまま曖昧なままにはしておかない。
既に彼は一歩踏み出してしまった。
――でも、私は進めないよ……
勇気を出してみたけど、進めなかった……
肌に残る、彼の唇の名残が切なくて、真歩はしゃくりあげながら掌を開くと、お菓子の入った赤いブーツが現れる。
『何よ……子供扱いして……っ』
真歩は、憎まれ口を叩きながら、ブーツを胸に抱き締めて少しだけ笑った。