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愛しては、ならない
第49章 それぞれの決別
ハンドルに顎を乗せて、踏み切りの明かりを睨みながら、真歩はついこの間登録した結婚紹介所で薦められた何人かの男性の名前とプロフィールを、
受験生が単語を覚えようとするかの様にぶつぶつ口の中で繰り返す。
「……笹木宗義……ささきむねよし……三十九歳……建設会社役員……趣味は釣り……性格は温厚で、粘り強く……我慢強い……明るい女性がタイプ……
内藤忠雄、ないとうただお……四十五……バツイチ子供なし……会社経営……趣味は読書に映画観賞……性格は負けず嫌い……
男性を立ててくれる大人しめの女性希望……む――ん……
釣りねえ……私は興味ないけど……たまには一人で旦那さんが出掛けてくれないと、邪魔って思う時もあるかもだし、まあいっか……
自分の事を温厚だとかいう奴にかぎってさあ、結構短気だったりしない?
内藤忠雄さんもねえ……読書に映画鑑賞って、無難過ぎる趣味ね……なんか嘘っぽい~本当はもっと人に言えないようなえぐい趣味があるんだけど、とりあえずプロフを埋める為に言ったぽくない?
それにさあ、今時男性を立ててくれる女がいい、とかいう奴ってどうなのよ――っ!」
ついつい、ケチばかりつけてしまう自分の勝手さに自分自身で呆れてしまい、苦笑いしていると、踏み切りの向こう側から言い争うような声が聞こえてきて、気になり思わず窓を開けて耳をそばだてて、目を凝らす。