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愛しては、ならない
第50章 それぞれの決別②
菊野が咳き込むのが聴こえ、真歩は狼狽える。
「菊野……落ち着きなさい……また過呼吸になったら大変よ」
『う……うん……』
「大丈夫だから、ゆっくり話して」
何が大丈夫なのかも分からないが、取り敢えずそう言ってやるしかない。
真歩は電話で声しか掛けられないのを焦れったく思った。
暫くすると、大分落ち着きを取り戻した菊野が辿々しく話し始める。
『何とか……大丈夫なんだけど……悟志さんね……自殺未遂したの』
「そんな!なんでよ!」
真歩の背中に寒気が走ったが、直ぐ様怒りが込み上げてくる。
折角目を醒ましたのに。毎日毎日、彼の快復を、目覚めを願っていたのに。報せを聞いたときには本当に飛び上がって喜んだのに。
皆が彼を待っていたのに。彼だって、そう言う周囲の人たちの気持ちが分からない人ではない筈なのに。なのに何故?