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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ
悟志は朝までぐっすり眠り、目覚めた時には、私が言った言葉も、自殺未遂騒ぎも全く覚えていなかった。
彼がいつものように優しい笑顔で、「おはよう、菊野……昨夜は素敵だったね」
と言った時に、背筋が凍り付いた。
悟志は、剛に関する事を全て忘れていて、昨夜の事も忘れてしまった。
明らかに、彼の精神のバランスが崩れかかっている証拠だ。
強烈なストレスや、精神的ショックによって一部の記憶を無くしたりすることがある、と医師に言われた。
つまり、心的外傷ストレス障害、PTSDの疑いがあるかもしれない、と。
何か原因と考えられる事はないか、と聞かれ、私は言葉を詰まらせてしまった。
――そんなの、私のせいに決まってる……それ以外ない……
あんなに朗らかな悟志さんが……私のせいで……