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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ
「……っ」
彼の唇が触れた途端、身体にも心にも消えぬ炎が点いてしまった。
逃げようとする私の舌を彼は掴まえて、甘く蹂躙する。
彼の手が腕から背中に廻され、髪を撫でて腰をなぞった。
甘美な波が足元から脳天を突き抜け、呑まれそうになるが、ふと悟志の昨夜の表情を無くしてしまった顔が過り、私は夢中で剛の胸を突き飛ばした。
力一杯突き飛ばしたつもりだったが、彼は少しよろめいただけだった。
口の端を皮肉に歪め、また私の腕を掴み組み敷く。
「そうやって……俺をからかうのも、もうお終いにしませんか」
「……っ」
「俺に抱かれるのが嫌だったなら……最初から拒めば良かったんだ……」
「――つ……剛さん」
「今更、母親……だって?」
「……」
彼は、眉間に皺を寄せて苦し気に息を吐くと、突然私から手を離して頭を抱えて叫んだ。
「――ふざけるな!」