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愛しては、ならない
第52章 最後に、もう一度だけ
私はソファの上を後退り、いつの間にか乱れ太股が覗いていたスカートを直すが、剛は長く真っ直ぐな前髪を指でかき上げ、そんな私を鋭い目で見る。
また一歩、近付いて来る彼から目が離せず、私は首を振った。
「……き……昨日一緒に居た女の子と……お付き合いしてるんでしょ……?
だったら……」
「だったら……なんなんです」
彼は、私の身体の横に手を突いて、片足の膝をソファに載せて真上から見おろす。
お互いの息が触れる距離が苦しくて、顔を逸らしたが、彼の手が顎に伸びてきて掴まれてしまった。
色素の薄い彼の瞳の底には蒼い焔がちらついていた。
「そう……俺は……他の女の子とセックスしました」
「――っ」
聞きたくなかった事実に私は打ちのめされて、新しい涙を溢れさせた。
剛は指で涙を掬いながら瞳を揺らし、声を震わせた。
「何を泣くんです……
貴女が望んでいた事ではないですか……貴女から離れる事が……」
「ふ……く……っ……ひっ……ん」
確かに彼の言う通りだ。私との関係をズルズル続けるなど許されないし、彼の為にはその方が良いのだ。
けれど、彼がその腕に他のひとを抱いた事を考えるだけで嗚咽が込み上げて、私は子供の様に泣きじゃくった。