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愛しては、ならない
第53章 最後に、もう一度だけ②
「――も、もうっ……剛君のエッチ!」
「ええ?」
「じゃ……じゃあ、私行くね」
夕夏は耳まで真っ赤にして自転車に乗り込み走っていった。
昨夜の俺の責めにクタクタになった彼女は、アパートを出る時に「もう……足腰立たない……」
と言っていた筈だが。
元気に自転車を漕ぐ後ろ姿に安心し、彼女に手を振り小さく呟く。
「ありがとう夕夏……」
彼女が居なかったら、昨夜自分はどうして居ただろうか。
衝動的に病院を飛び出してしまったが、その後の事は何も考えていなかった。
施設に戻ってみようかという考えも頭を掠めたが、もうあそこは俺の帰る場所ではない。
養子縁組をしてから離縁など出来ないのも知っているし、下手に施設に連絡を俺が入れたりしたら、菊野があらぬ疑いをかけられてしまうかもしれない。
やはり、元通りに西本の家で暮らすのか、花野が勧めてくれたように俺が独り暮らしをするのか、の二択だろうと思った。