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愛しては、ならない
第53章 最後に、もう一度だけ②
菊野に会わなければ、こんな胸苦しさと身体の疼きが起こることもない筈だ。
ふと思い出して切なくなる事もあるかも知れない。
だが、目の前に菊野が居なければ、彼女に襲いかかってしまう危険もない。
悟志が居ようと居まいと、俺はきっと彼女を求めてしまう。
彼女が側にいる限り、欲情の焔は絶える事はない。それは彼女をこの家ごと焼き尽くしてしまうだろう。
彼女も、俺も、いつか破滅してしまう――
思い切るんだ。
彼女と決別する勇気を持て――
俺は、夕夏の姿が見えなくなると家に向き直り、深呼吸をして鍵を廻した。