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愛しては、ならない
第53章 最後に、もう一度だけ②



目眩をおぼえ、ふらつきながら頭を抱えて天を仰いだ。

菊野は、また涙を流して震えている。





――祐樹と似ているから、俺をこの家に迎えたいと言ったのは貴女ではないのか……

それを……気味が悪いと?

あんなに瞳を潤ませて、声を詰まらせて、震えながら俺を受け入れて喘いでいたのは……全て演技だったのか?

俺を熱く見詰めたのも……嘘だったのか?

だったら……何故一度でも、俺を好きだと、愛している等と言ったりしたんだ――!



「……っ」



俺は脱ぎ捨てた服を掴み、素早く身に付けながら彼女に背を向けて呟いた。



「菊野さんの気持ちはよく分かりました……」

「つ……剛さん、あのね……」



追い縋るような声に、俺は苛立ち怒鳴る。



「もう……止めろ!!」



彼女の息を呑む気配が背中に伝わった。

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