この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第54章 四年後
祐樹は、剛の左隣に立って挑みかかるような目を向けると、明るい和音を弾き始める。
剛と目が合うと、悪戯な笑みを溢して言った。
「真歩先生……真歩先生の結婚式なんだよ」
「ああ……へえ、そうなのか」
「うん。剛が出て行く前に家教辞めてから、母さんと会ってなかったし、遊びに来ることも無くなってたんだけどね、招待状が来てさ」
祐樹は結婚行進曲を自分の勝手なアレンジで弾いている。
剛も高音のパートを彼に合わせて弾き、二人のちょっとした華やかな連弾になった。
「東北の農家の嫁になるらしいよ」
「……意外だな」
「まあ、愛は人を変えるんだろうね――」
「何を生意気いってんだ」
剛に突っ込まれて祐樹はアカンベをして見せた。