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愛しては、ならない
第54章 四年後
剛の唇が微かに震えている様に見えたが、彼は深呼吸をして天を仰ぎ、何秒かの沈黙の後、祐樹に訊ねた。
「……で、大丈夫……だったのか」
祐樹は、当時自分が見た光景を思い出してみるが、あの状態が果たして剛の言う「大丈夫」なのか分かりかねた。
だが、今にも飛び出して森本を殴り付けに行くのでは無いだろうか、と思える程に怒気を含む剛の声や表情を見て、そう答えてやるべきだと思った。
「ああ、なんとも無かった」
「……そうか」
剛は、いからせていた肩を撫で下ろし、溜め息を吐いて幾分か表情が和らいだが、何処か釈然としないようで、腕を組み考えているようだった。