この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛しては、ならない
第54章 四年後
祐樹は、そんな彼を見詰めながら歯痒かった。
剛が菊野の名前を一切口にしないのは、やはり憎しみや嫌悪からではなく、深い思慕からなのだろう。
それが証拠に、森本との一件を聞いた彼は明らかに我を失い、いつものクールな仮面が外れた。
なかなか内面を見せてくれない彼なのに――
彼は、自分が今どんな様子をしているか、自覚がないのかも知れない。
剛は、一見酷く冷たい様だが、自分の感情に鈍感なのだろうか?と思える節がある。
やはり、不器用なのだろう。
――大事なものはちゃんと大事にすればいいのに。離したくない物は離さずに握りしめていればいいのに。
祐樹はそう言ってやりたくなるが、今の剛に言っても、余計なお世話だとバッサリ返されるのだろう