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愛しては、ならない
第55章 ウエデイングブーケ
あの電話が、私たちの最後の会話なのだ、と思っていた。
真歩は剛の家庭教師も辞め、真歩が登録していた家庭教師協会からは別の教師を紹介されたが、肝心の剛が家庭教師を続ける事を辞退したのだ。
剛はあの日、私を何度も抱いてから家を出ていき、戻ってこない。
花野とは既にそういう話をしていたらしく、彼は一軒家で一人暮らししながら新しい学校へ通った。
荷物を取りに来る時に会えるかも知れない、と期待していたが、剛は来ず、代わりに貴文がやって来た。
剛は余程私に会いたくないのだろうか、と激しく落ち込んだが、それも当然の話だった。
私が彼に言った酷い言葉を思い返すと、我ながらよくもあんな台詞を言えたものだ、と思う。
彼に抱かれている内に、また愛の言葉を言ってしまいそうになる自分を塞き止めるために、彼が躊躇なく私から去っていけるように、わざと酷い事を言った。
――祐樹と同じ顔をした貴方に抱かれるのが気持ち悪い……と。