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愛しては、ならない
第55章 ウエデイングブーケ
心配された悟志の精神面も、私が見る限りでは倒れる前と変わらない様だった。
自殺未遂の後、何度か心療内科に相談に行ったりもしたが、仕事にも問題なく復帰できたし、フラッシュバックを起こす事もなく平穏に過ごせていた。
――剛との事を蒸し返したらいけない……
常に頭の中にその言葉を置いて、私は悟志に接した。
彼は以前と同じどころか、もっと優しくなった。
私の事を甘やかし、いつも見守って――気が付くと優しい瞳が私を見ているのだ。
そんな彼が、怖いと思うこともあった。
私を見詰めている悟志に、祐樹が呆れて言ったことがあった。
『父さん~俺の方が恥ずかしくなるよ……母さんがそんなに好き?』
『そりゃあ……好きなんて物じゃなくて……愛してるからね』
悟志はさも当然の様に答えたのだ。