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愛しては、ならない
第55章 ウエデイングブーケ
『うわ――聞くんじゃなかった――っ……頼むからいちゃつくなら俺の見てないところでやってね』
『祐樹にも、こんな風に心から愛せる人が出来たら父さんに真っ先に紹介するんだぞ?
そういう事はオープンにいこうな!ねえ、菊野』
悟志はそう言って私を手招きすると、抱き締めてキスしてきた。
祐樹はうわあ、とかなんとか叫んで自分の部屋へと逃げていったのだった。
『もうっ……悟志さん!!』
『ごめんごめん……ついね』
彼は少し赤くなって、大事そうに私の頭を撫でた。
彼に抱き締められると、安心できた。
この腕に守られている限り、もう私を乱す物はないと。
この家にはもう、私を惑わせるあのシャボンの薫りはない。
いつも剛から薫っていた、切なくなる薫り――
この瞳に映しただけで身体の奥が熱を持ってしまう、彼がピアノを弾く姿も――
けれど、成長した祐樹が彼に重なって見えてしまう瞬間がある。そんな時、私はいちいち胸を高鳴らせ、挙動不審な振る舞いをしてしまう。