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愛しては、ならない
第56章 二十歳の同窓会
俺は思い出したように自分の耳に掛かる銀のフレームに指で触れて曖昧な笑いで返す。
清崎は探るような眼差しを向けたが、俺が何も言わないので小さな溜め息を吐いて肩を竦めて笑う。
「似合ってるよ」
「そうかな?……ありがとう」
「剛君は何をしても似合うし素敵だね……昔から」
彼女の口調に何か含みを感じ、俺は軽く咳払いをし、レモネードを飲み干す。
「――その……何も言わないままで……悪かった」
彼女は瞬きをして俺の目をじっと見つめ、次の言葉を待っている様だった。
俺は空になったグラスに視線を落として続ける。
「清崎に、ちゃんと転校の事を話すべきだったし、君に別れを言うべきだった」
「……別れって……転校の事?それとも、私とは恋人になれないって事?」
「――」
絶句する俺に彼女は華やかな笑みを向けて明るく言う。
「もう……剛君ったら……言うのが遅すぎ!」