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愛しては、ならない
第58章 再会




「さて、ケーキを飾るフルーツを……」



やる事は山ほどある。焼き上がったスポンジケーキのあら熱を取る間に果物を切ったり、かぼちゃの冷製スープを作ったり……

四年ぶりに彼の誕生日をお祝いしてあげたかった。

……一緒にお祝いをすることは叶わないけれど、せめてこの位はしてあげたい。

剛を引き取ってから、彼の誕生日には祐樹や悟志にするのと同じようにケーキを焼いていたのだが、彼が出ていってからは、それが出来ていない。

毎年八月の終わりの日が来る度に、『ああ……今日は剛さんの誕生日……お祝いしてあげたかったけど、私に祝ってもらいたくもないわよね』

と、一人で凹んでいた。

今年こうして行動を起こす気になったのは、真歩と再会出来て気持ちが前向きになれたからだ。

真歩の結婚式は素晴らしかったし、真歩とも前と同じように友達に戻れた――



「でも……剛さんと家族には……戻れないわね……」



かぼちゃを裏ごししながらふと呟いた時、遠くに雷鳴が聞こえ窓の外を見ると、真っ黒な雲が物凄い速さで空を覆い始めていた。




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