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愛しては、ならない
第59章 再会②
突然、祐樹の顔――いや、祐樹に似ているが祐樹とは全く違う青年の面差しが瞼の裏に過り、全身が寒気に総毛立った。
すらりと伸びた手足の祐樹に良く似ている青年が、リビングのピアノを優雅な指使いで弾いている――
そんな光景が、今目の前で見える。
思わず指で目を擦るが、実際にはそんな青年は今、ここには居ない。
だが、確かに彼はここに居たのだ。
ここに居て、このピアノを弾いていた――
悟志はピアノに近付き、蓋をそっと開けた。
すると、真っ直ぐな髪を揺らしながら繊細なメロデイーを奏でる剛の幻が目の前に現れ、驚きに悟志は軽く飛び退く。
『……る……るる……ラララ……』
後ろから、優しい声が聴こえて振り返れば、菊野がキッチンの奥で料理をしながらこちらを見ている。
「菊野――」
悟志が一歩歩み寄るが、菊野が見ているのは悟志ではなかった。
悟志は背中に冷たい汗が流れるのを感じながら、菊野の視線を追った。
その先には、ピアノを弾きながら時折菊野の方へ涼やかな笑みを向ける剛が居た。