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愛しては、ならない
第59章 再会②
菊野は、かつて見たことのない程の幸福の色――幸福にもし色彩があるとしたら、こんな風なのだろうか。
瞳に、頬にうっすらとその色を浮かべて、他には何も目に入らないかのように、料理の手を止めて剛を見つめていた。
悟志が側に居るのに、菊野の目に映っているのは剛の姿だけだ。
剛も、その瞳の底に憧憬の様な色を漂わせ、彼女を見つめている。
二人の間には、誰も踏み込めない空気があった。
悟志は奥歯を噛み締め、拳を握る。
何を今自分が感じているのか、認めたくなかったが、この感情は嫉妬の他にはなかった。
――落ち着け……僕は……何を寝ぼけているんだ……
これは幻だ……幻なんだ――
悟志は、窓の外で雷が光るのを見ながら、そう自分に言い聞かせる。